放出できるエネルギーはどのくらいかの計算ができる。無損失の混合温度56℃が計算されてるので計算は簡単だ。
熱容量Ctの80℃の水1と同熱容量の40℃の水2の元のエネルギーの和(E12)と混合後の56℃の熱容量2Ctの水のエネルギーEmの差が、放出できるエネルギーWになる。
E12 = 80Ct + 40Ct (水1と2が持っていた混ざる前の熱エネルギー)
Em = 56 × 2Ct (可逆的に混ぜた後の熱エネルギー)
W = E12 - Em = (80 + 40 - 2 × 56) Ct = 8Ct (放出できる最大エネルギー)
ここでは、簡単に考え方だけを説明したいので、絶対温度や定圧熱容量などの専門用語は使わなかった。
以上、「質の違うものの接触がエネルギーを放出する」という真実を高温と低温の水の接触で説明した。
説明は直感的に理解できるように、簡単にした。温度の違うものが触れ合い混ざろうとするとエネルギーを放出する例は我々の生活環境にあふれている。
1)湿った暖気と乾いた寒気が触れ合って降る雨や雪、風、それらによる嵐や災害
2)暖気が渦を巻きながら空の寒気に向かって上昇する竜巻
3)寒気に向かう上昇気流が運ぶ電荷が引き起こす落雷
4)寒流と暖流が作る海流や対流
大きな温度差があると、放出エネルギーもその分大きい。
質の差は温度だけではない。人の気質や情熱、文化教育などの質の差が国力、GDP、人口、結婚、特許にも及ぶ差につながり、表現される。
このことを、本コラム「熱力学に重なる社会現象」で説明できるのでないかと思っている。
質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(4)
Vol.13-18
2025年05月09日
質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(4)
この記事の内容
質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(4)
付録2 「可逆的な熱移動」の真実を表現する「エントロピーの変化=0」の直感的説明

図2-2 高温T1の熱源から低温T2の熱源に熱を移動させる熱機関の動作の概念図。
熱エネルギーQ1が高温熱源から流出し熱機関に流入して変化量δS1を作る。熱エネルギーQ2が熱機関から低温熱源に流入して変化量δS2を作る。その時、仕事エネルギーWを放出する、または蓄積する。
図2-2に熱エネルギーを移動させる熱機関動作を概念的に示した。
Q1の熱が流入してQ2の熱が流出する。熱機関はQ1とQ2の差の分の仕事エネルギーWを作りだす。
エネルギーの流入(増加)をプラス、流出(減少)をマイナスの記号で表現する。エネルギー保存則が成立していることを表現すると
Q1 = W + Q2 または Q1 - Q2 = W
移動した熱エネルギーQは熱機関と熱源に変化を作り、変化量δSを作ると仮定する。
これを温度Tと変化量δSで表現して、
Q = TδS
とする。この表現は押し付けに感じるかも知れない。次回付録3にこの線形表現のイメージを示す。
熱移動で生じた熱機関の変化は変化量δSを用いて
Q1 = T1δS1 (熱源から熱機関へ熱Q1が可逆的に移動)
-Q2 = T2δS2(熱機関から熱源に熱Q2が可逆的に移動)
と表現される。
熱移動が終わったあと、熱機関の変化量が無く元の状態に戻っていれば、逆に動作させることができる。
即ち、逆に熱機関を動かして、低温熱源からQ2を流入させて、仕事エネルギーWを熱に変換して元のエネルギーQ1を高温の熱源に戻せる。
熱機関の全体変化量δS=0は熱移動の可逆動作を表現する。
従って
δS1 + δS2 = 0 または Q1 / T1 -Q2 / T2 = 0
という表現が得られた。
ここまで変化量という言葉で扱ったδSのことをエントロピー変化と言う。
[ Author : Y. F. ]