前回のコラムでは、混合した水の温度が60℃でなく56℃になる理由を説明した。今回は付録として、その温度の計算が気になる方のために、熱力学の概念のエントロピーを使った計算を示す。
この段階では、付録について理解しようとしないでいい。それでも、直感的に理解できるように記述してみた。
付録1は計算の全体を表す。付録2では可逆的に熱を移動させる基本的な概念「エントロピー変化がゼロの熱移動」を直感的に説明する。付録3では熱エネルギーが温度とエントロピー変化の積で表現することを直感的に納得させる説明をする。
付録1 高温の水1と低温の水2が可逆的に混ざるときの水の温度の計算
接触して混ざる前に1と2の水が持っていたエネルギーより、混ざった後の水のエネルギーは小さい。
混ざるときに、外部にエネルギーを取り出せる仕組みを通して、可逆的に取り出すと、そのエネルギー分だけ、混ざったあとのエネルギーが減っている。
可逆な方法で外部に移動させたエネルギーで可逆的に熱を戻せばエネルギーは保存されて、水1と水2は元に戻せる。可逆的でない方法で(非平衡な方法で)外部にエネルギーを移動させると、水1と2は元に戻れない。
水を可逆的に混ぜるときに放出できる唯一最大のエネルギーは計算できる。それは2つの水から取り出せる最大の出力エネルギーに相当する。
そこで、逆戻りできる方法で混合した水の温度は何度になるかという問題を解いてみる。
図2-1は80℃の水と40℃の水を接触させて混ぜることを示す。しかし、この図はどのように混ぜるかは描いていない。熱の移動させる方法を描いてないので、図は曖昧な設定になっている。
小学校時代の問題だったから、小学生を教育する側にとっては十分に明瞭な概念の問題だったのかも知れない。
コラムColumn
質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(2)
Vol.07-12
2025年02月19日
質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(2)
この記事の内容
質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(2)

小学校で習った答えの出し方は明瞭であった。混合した後の温度をTmとすると
Tm=(80℃xCt+40℃xCt)/2Ct=60℃
が答えだった。小学校の問題では熱容量Ctは重さだったかも知れない。答えの原理は全エネルギー保存だった。
[ Author : Y. F. ]