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質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(1)

Vol.07-12

2025年02月19日

質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(1)

質の違うものの接触がエネルギーを放出するという真実(1)

第1章では真実表現について述べた。
今起きている現実は真実の表現だ。その真実は存在しているが、目に見えない。それがある場所すら見えないが存在している。
目に見える今起きている社会現象は真実の表現なので、それに対応する真実は存在している。
その真実の一つが表題に掲げた「異質のものの接触とエネルギー放出」だ。

「質の違うものの接触がエネルギーを放出する」という真実を分かりやすい例で説明してみよう。
この説明も熱力学を理解してからだと説明が直接的で分かりやすい。しかし、熱力学は簡単に理解できない。
そこで、説明の順番を変えて、真実を肌で感じるような例で説明してみる。
温水と冷水の混合という例を使う。それであっても、熱力学の概念を少し取り入れて、説明してみる。少しずつ熱力学の思考に慣れるためだ。

まず最初に小学校で習う水の混合の例がある。高温の水と低温の水を混ぜたとき、何度になるかという問題が小学校であったのを記憶している。まず、それを思い出して、その問題を作ってみる。
水の例のあとに、専門の電気の接触の例も紹介する。これらを理解したあとなら、この第2章の真実の意味が分かるはずである。

異質なものを接触させる真実の例1
小学校の問題がある。同じ量の80℃の水と40℃の水を混ぜると、混ぜた水の温度は何度か?という問題がある。
  小学生の答え:中間の60℃ (正しそうだが、実は正しくない)
  正しい答え:混ざりかたに依存して外部にエネルギーを放出して60℃と56℃の間の温度になる。

まず、簡単に熱力学の答え(正しい答え)の概念を説明しておこう。
温度が違うことは、即ち、質が違うことを意味する。違う温度の水が混ざるとき、熱が高温から低温に何事もなく移ることはできない。対流を起こして、擦れて摩擦熱を放出する。耳をすませば音もする。対流の中にプロペラを置けばそれが回り発電する。
即ち、混ざるときは必ず外部にエネルギーを放出する。「エネルギー放出なしで、異質なものは混ざらない」と言うこともできる。

小学校時代の私は、どうしたら答えが出せるのか分からなかった。クラスの中に答えられる人はいなかった。
先生がやり方を教えたのが記憶に残っていて、どうやって混ぜるかという素朴な疑問があったような気がしている。今は、混ぜ方を考えたのでは、答えが出せなくて当たり前だったと思う。

56℃という温度がどうして出たのかというと、外部に放出するエネルギーを見込んだ計算から算出した。
計算値は唯一の経路をたどる理論値だ。唯一の経路と言うのには理由がある。急に乱暴に混ぜるのでなく、時間をかけて可逆な方法で熱を高温の水から低温の水に移動させる。
この時、可逆な道筋は一通りしかないからだ。
可逆であるということは、熱を移動させるのに無限の時間がかかることを意味する。可逆であるとは損失が無いとも言える。損失とは戻ってこないエネルギーを意味する。
ここで、損失なしで元に戻ってくる平衡状態を経由しながら熱を移動させる理想を考える。
低温から高温に熱は移動しないということを経験的に誰もが知っている。だから、高温から低温に熱が移動してしまうと、それは平衡状態でない。
現実には、平衡状態を維持したまま、熱を移動させることはできない。しかし、無限に時間をかけて、平衡状態に極限まで近づけて、熱を移動させる理想モデルは考えられる。

例えば、先ほどの水を混ぜる例で言うと、水が混ざるときに発生する対流のエネルギーを保存するやり方である。
高温と低温の水が混ざるときに起きる対流の中にプロペラ発電機を置いて対流のエネルギーを電池に蓄えるとする。
水が移動するときに流体が擦れる摩擦エネルギーは存在する。この摩擦エネルギーも力仕事のエネルギーとして蓄えられると仮定する。
水が運動することによる振動エネルギーも何かの方法で蓄えられるとする。即ち、混ざるとき発生するこれらの運動エネルギーを再利用できるように保存すると仮定する。
これら蓄えたエネルギーはもともと、水が持っていた熱エネルギーにあった。
混ざるときの運動を通じて放出したものだから、もとの水から見ると、水が失ったエネルギーになる。外部に放出したエネルギーに相当する分だけ、混合した水はエネルギーを失っている。
失ったエネルギーの分だけ混ざった後の水の温度は下がる。この定性的な考えは難しい話でないから直感できるはずだ。それが、混合した水の温度が60℃でなく56℃になる理由だ。
その温度の計算は、ここでは知らなくてもいいが、気になる人もいるだろう。
気になる人のために熱力学の概念のエントロピーを使った計算を付録として次回のコラムで示す。

[ Author : Y. F. ]

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