コラムColumn

熱力学に重なる社会現象(1)

Vol.01-06

2024年02月09日

まえがき

大学に入学したのは1968年だった。当時、大学では2年間の教養部でさまざまな分野の授業を受けた。
物理の授業で熱力学というものが登場した。難しくて理解しなかったが、不思議に、ずっと関心を持ち続けた。今になって、さまざまな社会現象と熱力学が重なると直感した。改めて熱力学を見直して社会現象を重ねてみた。よく重なると感じる。うまくそれを説明できれば、そうか、と多くの人に思ってもらえそうだ。

人の欲望はエネルギーに相当する。お金は欲望エネルギーの痕跡を表現するもの。欲望には命があるので、衰え消える。それが数字になって銀行にあると、劣化しないで生き続ける。銀行の磁気テープの電子記録は劣化しないからエネルギーは移動して姿を変えて保存される。その変化や質・量・方向を探るとき、熱力学は理解を助ける。
そこで人の活動を熱力学に重ねると、どう見えるのか、一般の人が理解できるように解説を試みたいと思った。
人の欲望や活力は社会現象を作り出す物理的な熱エネルギーに相当すると仮に考えてみた。

分かりやすい例を挙げてみる。
日本のGDPが30年間も成長していない。データも明瞭だ。皆、これを問題だという。
GDPは国内総生産額と定義されている。日本のGDPはそこに暮らす人の活力(見えない真実)が作り出している。
GDPが増えないということは活力の総和が増えないことと等価だ。
生産が増大して、それが消費されるとバランスして活力のエネルギーの移動(消費)が持続する。エネルギー保存が持続すると言い換えてもよい。
だが、生産されたものが在庫になったり、タンス貯金になると、その生産のエネルギーは社会に戻らない。消える。
消えたということは利用されないエネルギーになったという意味になる。宇宙のかなたに消えたのと同じだ。

消費を増大させる目的で、お金(エネルギー)を給付しても、お金が消費に向かうとは限らない。消費されなかったお金は逆戻りしないので、エネルギーとして闇に消える。熱力学の法則では、熱いお湯から冷たい水に移った熱は逆戻りしない。ただ熱エネルギーは保存されている。一方、お金や欲望のエネルギーは消える。
熱の移動を表現する熱力学の原理と重ねると、GDPが増大しないことや子供が増えない現象を理解できる。
これを、分かりやすくした熱力学と重ねて解説してみたい。

難解な熱力学を社会現象に重ねてみる動機

1968年に私は余市高校を卒業し、東北大学電気系に進学した。

当時、熱力学は入学1年目の教養部で習った。それは難解だった。本質を理解していないので難解に思ったに違いない。何回も教科書を読むと理解した気になった。しかし、それは、ただ記述を見慣れて記憶しただけで、理解したのと違った。

だから気分が悪く、もやもやしていた。理解できないままに大抵の学生は通りすぎていることが、あとになって分かった。でも、それは普通のことであるのも知った。
専門教授でも理解したと感じて溜飲が下がるのに20年もかかったというくらいだからだ。溜飲の程度は違うかもしれないが。溜飲はまだ下がっていないが、熱力学は何か社会現象を説明しているように思えて、しょうがないのだ。

そこで、身の周りで起きていることを定性的に理解できるように熱力学に重ねてみた。
妙なくらい熱力学の表現は社会現象を説明していると思った。現象をよく説明しているという気分になれれば、説明は成功だ。教科書的な式をつかった記述は、おうおうにして本質を理解させない。
だから直感で理解できるようにできないか、腐心した。

そんな訳で、説明の手順を何回もやり直すことになった。
最初、熱力学を説明して理解してから、現象を説明しようとした。すると、熱力学が理解できないので、現象を説明できない結論になった。最初に熱力学を説明する手順は無理ということが分かった。

それで、中学生レベルでも、知らないうちに、いつの間にか、熱力学の本質が分かるやり方に辿りついた。
それが分かり、今度はその理解の手順を熱力学に当てはめると、すっと分かるように説明できそうな気がした。
順番がすっかり入れ替わり、熱力学の理解は本説明の最後になる。
その時は、既に本質を理解しているはずなので、熱力学が理解できたと感じてもらえると期待する。

熱力学の理解は、最後にたどり着くことになった。
熱力学の前に、「本質を真実として、その表現を記述すれば、それが理解となる」ことを紹介することになる。

[ Author : Y. F. ]

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